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2016年11月17日 (木)

悲しいお別れ

A先生は83歳になられる。そして、まだ75歳の奥様を見送らなければならなくなった。

A先生はいつも明るく陽気で笑いが絶えない。犬の散歩で足腰を鍛えゴルフもいまだ現役、近頃は負けなくなったが数年前まではよく負けた。

全く知らずにいたのだが、奥様の発病は10年前だったそうだ。

10年前にがんが見つかり手術を受けて順調に回復、それ以来、病気の話は禁句で人生を楽しむ事を心掛けて過ごして来たという。

残念ながら3年前に再発。時間は充分過ぎたのだからまた新しいがんが出たという事なのだろう。

今度はなかなか厳し戦いで入退院を繰り返された。

それでも最期の2週間ほど前まではA先生のご飯をちゃんと作っておられたという。

先生の言葉を使わせていただけば「お父さん、身体が鎧を着たようでもうどうにも動かない。病院で休ませてください」と言われたそうだ。

それが最後の入院となり、最後の三日は先生も泊まり込みで過ごされたそうだ。

もう8,9年前になるだろうか。A先生のお宅に飲み会の後に数名で押しかけた事があった。

突然の来客に奥様は全く驚いた様子もなく、明るく実に手際よく応対してくださった。

一緒になって酒も飲み(飲んだような記憶がある)、大いに笑って楽しいひと時を過ごさせていただいた。

その底抜けに明るい奥様は実に多趣味で、スポーツウーマンでもありゴルフではホールインワンを2度もしていると聞いた事がある。

鎌倉彫の腕前はプロの域に達しておられ、お弟子さんが何人もいたそうだ。

A先生の喪主としての挨拶には、皆涙がこぼれた。

泣きながら病気の経過を話され、弔辞を贈ってくれた友人の方々にお礼を述べ、奥様を偲ばれた。

そして最後に「思いっきりやりたい事をやって、楽しんで、悔いのないいい人生だったと思います。今頃あっちでニコニコ喜んでいると思います」と締めくくった。

ご自身の生涯の伴侶に対して、良い人生だったと自信を持って言える夫、これも素晴らしい愛の形、自分はそんな言葉が言えるだろうか・・・。

A先生はポケットからハンカチを何度も出して涙をぬぐう。

そのハンカチが、やがてひらりと伸びて頬をぬぐう度に大きく揺れた。

それはまるで遺影の奥様に、ハンカチを振りながら別れを告げているようにも見えた。

晩秋の会津に冷たい涙雨が降る。

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