« 十五夜の再会 | トップページ | グキッ!からの酒場放浪記、からの・・・。 »

2016年10月20日 (木)

長い付き合い

会津若松市を代表する割烹「萬花楼」、代表するというか、他に日本庭園のある割烹・料亭が無くなってしまった、と言った方が当たっているのかもしれない。

その昔は、日本庭園のきれいな料亭が軒を連ねていた。

飯盛、慶山からの清冽な水の流れに沿って、「梅屋敷」「米熊」「白龍」、「新たつた」「万松」などという古い名前も浮かぶ。

それぞれ、駐車場やテナントビルに姿を変えた。

萬花楼だけが今も池に満々と水を湛え、錦鯉が泳ぎ、流れ落ちる滝の水音が、広々とした庭の芝生に響く。

この池の前で従兄弟たちと撮った写真が古いアルバムにある。坊ちゃん刈りの半ズボン姿だからまだ入学前だ。

おじいさんかおばあさんの法事でもあったのだろう。池の鯉に餌をやって、みんなではしゃぎまわって従兄弟のH夫が調子に乗って池に落ちた。

あれから、この料亭に何度お世話になった事か。

七五三、歳祝い、父・母の葬儀の夕食使い、法事、娘の婚約などなど数えきれない。人生の節目、節目の思い出がある。

広い池を取り囲むようにある座敷、庭の趣は今も変わらない。(植物は成長しているのだろうけれど)

当院の臨床研修医第一期生は、素っ裸でこの池に飛び込み、翌年からは池にピアノ線が張られる羽目になった。

父の十三回忌、母の二十三回忌では、遠来の親戚のために芸者衆を上げて昼の宴を楽しんだ。

娘の婚約者と食事した夜は、軒にも届くほどの大雪だったっけ・・・・。

昨晩、会津若松ロータリークラブと姉妹友好クラブの米沢ロータリークラブとの合同例会が萬花楼で開かれた。

小一時間ほどのまじめな例会の後、芸者衆も入り賑やかな宴となった。

とても10月とは思えない暖かな陽気で、座敷の戸を開け放ち、庭からの風が心地よい。

宴は大いに盛り上がり、やがてお開きに・・・。三々五々、カラオケに、スナックにと夜の街へ散って行く。

開け放った庭の風があまりに気持ちが良いので、なんだか帰りそびれてしまった。

酒好きのOさんが残っていたので、「もう少し飲みましょうよ」と、庭に誘った。

座敷の椅子を庭に持ち出して、残酒をちびりちびりと飲む。

滝の水音が耳に心地よく、風が実に気持ちが良い。まったく寒くもなく、暑くもなく。

こんな夜はめったにあるものではない。たった一つ惜しいのは、月がまだ出ていなかった事、空は晴れていたが、まだ昇ってはいなかった。

後片付けに忙しく立ち働く仲居さんたちも「あらあら、そんなところで・・・」と言いながら笑って見てる。

「少し入っているから、これを飲んだら・・・」とママちゃんが、残り物の玄宰を冷蔵庫から持ってきてくれた。

帰り客で賑わう玄関先を眺めながらご相伴、秋の冷酒が実にうまい。

本当に長い付き合いだ。こんなお髭の中高年になって、こんな風にこの庭で一杯飲むとはねぇ・・・!

で、特に嫌がられるでもなく、迷惑がられるでも、呆れられるわけでもなく。なんとなく優しいみんなの笑顔に包まれての酔っ払いなのだ。

嗚呼、こんな風に穏やかに和やかに、楽しく生きて行く事がこれから先の人生にとって一番大切な事ではなかろうか・・・。

冷気を感じる事もない、10月の珍しい夜風にそんなことまで思ったりもした。

そして加えて、ここまでくればもうこの料亭は街の宝だ、これを無くしてはならないなぁ・・・とも思う。

「まさひろさん、お車が来ましたよ」「はいよ、じゃあOさん行きましょうか」「もう行くのかよ?」「まぁまぁ、これ以上いると嫌われるよ、、、」「んじゃ、お世話様」

久しぶり・・・・本当に美しい秋の夜だった。

『十六夜の渡る池あり萬花楼』

« 十五夜の再会 | トップページ | グキッ!からの酒場放浪記、からの・・・。 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1327739/68037816

この記事へのトラックバック一覧です: 長い付き合い:

« 十五夜の再会 | トップページ | グキッ!からの酒場放浪記、からの・・・。 »