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2016年8月 2日 (火)

ミックスブレンド

喜怒哀楽、人は様々な感情を抱き、それが顔の表情になって表れる。

怒ったり、笑ったり、悲しんだり・・・様々な感情がスイッチングされるように切り替わっているように思うが、そうシンプルなものではない、という事が心の病を抱えた人の表情を見ると分かる。

顔の表情というのは複雑な感情がミックスブレンドされて出来上がっているものなのだ。

アルツハイマーや認知症の進んだ人の表情は固まっている。いわゆる無表情になる。

時に笑ったりもするが、笑うか、笑わないかのどちらかで、中間的な表情が欠け落ちている。

うつの人も遠くを見つめているような時間が長く、どこを見ているのか、何を考えているのか(楽しそうなのか不愉快なのかさえ)も表情から読み取ることは難しい。

ドクターでもない私が言っているので当てにならないし、ちゃんとした根拠を示せる話ではないのだが、よく人を見ている方なのでこれは当たっていると思う。

思うに、さまざまな感情が入り混じって出来ているのが「その人の顔」なのだ。

嬉しくもあり悲しくもあり、満ち足りていてもどこかに不安を抱えていたり・・・。

モンタージュ写真で顔を作ってみても決してその人にはならない。

あの有名な三億円犯人のモンタージュ写真、この人に似た人を探してください!というが、この人は今何を考えている顔に見えますか?と問われるとさっぱり分からない。

顔であって、顔ではないのだ。

いつも元気で、人と会うのが大好き、人を喜ばせるのが大好きだったM先生は、奥様が突然倒れられて懸命に看病を続けた。

回復を願い数カ月、奥様を励まし続けたM先生が急に表情を失ってしまった。

回復のままならない日々、やがてあらゆる意欲が消え失せ、うつむき一点を見つめる人となった。

数年の闘病を経て、初夏に奥様が、そしてすぐ後を追うようにM先生が亡くなられた。

ご遺体は痩せておられたが、そこに人は生前の面影を重ねてしまう。

闘病時とは違ってほんの少し微笑んでいるようにさえ感じた。それは変わってしまっていたけれど確かにM先生の顔だった。

きっと会津野を渡る風となり、あの人懐っこい、お茶目な表情をM先生は取り戻したに違いない。そして最愛の奥様ともども千変万化な表情を互いに見せ合っている事だろう。

そっくりの喪主さん(ご長男)は「ここ数年はみなさんにお会いする事も出来ませんでした。どうか、元気だった頃のみなさんと会うのが大好きだった父をみなさんの思い出としてください」と言った。

様々な事がミックスブレンドされているからこそ人生だ。

そんな表情豊かな日々から降りてしまったら、どれだけ味気ない表情になり、空しい時間になってしまうのだろう。

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コメント

隣席で同じく感じた通りです。
生一本というのも素敵な味を醸しますが、
オリジナルブレンドの嫋やかさにも心魅かれます。
ミックスな人間の不完全さが愛しい・・・だから落語は面白い。

不完全だからこそ、芸術や文学、さまざまな営みが必要なんでしょうね、人間には。お互い表情を失う事が無いように!近々、一献傾けようではありませんか。

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